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Writer's picture悦子 隅田

😸猫と段ボール箱📦

「拾って帰っちゃだめよ!」


10年前のことです。

仕事中の私のスマホに、息子(当時小学4年生)から電話がかかってきました。

「公民館の前に仔猫がいるよ。すごく小さい。3匹いたけど、1匹は友達が連れて帰った。『お母さんが飼っていいって言ったから』って」と興奮気味に話す息子。

そして、「連れて帰りたい」とも何とも言っていない息子に、突き放すような返事をしてしまったのは私です。

猫は嫌いではないし、子どものころに猫や犬を飼っていたこともあります。ですが、「猫!ましてや仔猫!お世話なんて無理無理無理…」というのが率直な気持ちでした。

夕方帰宅すると、息子がいません。仔猫のところだろうと思って行ってみると、そこにいたのは息子と数人の子どもたち。息子の手には、冷蔵庫から持ち出した牛乳瓶が握りしめられていました。日が落ちて薄暗くなってきているのに、帰るに帰れない様子です。

息子の指さす先には、平仮名で「ひろってください」と書かれた段ボール箱。目もまだ開かない白黒とサビの仔猫2匹がいました。

その場にいた子どもたちの話によると、この段ボール箱は、他の子が家から持ってきたもので、「ひろってください」と書いたのも他の子。子どもゆえの思いから、立派な捨て猫に仕立てあげてしまったようです。

「だれかに拾ってもらえるといいね」

私は、適当なことを言って子どもたちを解散させ、帰宅しました。

ですが、心穏やかではいられません。

子どもたちからそれぞれ話を聞いた近所のママさんと相談し、結局、その夜のうちに仔猫たちをウチに連れてきてしまいました。

翌日、獣医さんに診てもらったら、生後2~3週間の乳飲み子と分かってびっくり!

「ひと晩、この子達だけでいたら、低血糖、低体温で死んでいたか、カラスやイタチの餌食になっていたかもしれない」。授乳や離乳食、排泄、飼育環境の整え方など、一から獣医さんに教わったのが保護2日目のこと。

そこから、近所のママさんたちとチーム乳母を結成してお世話を頑張りました。当時のわが家には猫グッズなど一切なく、仔猫のケージは段ボール製、病院通いのキャリーは段ボール箱。そして1カ月後、白黒の仔猫は里親さんのもとへ、サビはうちの子になりました。

サビの名前は「こと」。ウチに連れてきた日の夜空に見えていた星座から、息子が名付けました。



2年前、たけねこくらぶの保護猫である茶トラの「ラオウ」も加わり、現在、2匹の猫がウチの家族です。このご縁から、保護猫の預かりをするようになりました。



今年5月末のことです。竹藪に段ボール箱に入った仔猫3匹(生後約1カ月)が遺棄されていました。行政の依頼でたけねこくらぶが請け負うことになったのですが、居ても立っても居られず「ウチで預かります」と手を上げました。かつて、段ボール箱の中でぐったりしていた2匹の姿を思い起こさずにはいれなかったのです。



竹藪で保護された仔猫3匹は、生後約1カ月で体重300g弱(5月30日)



3姫なので、左から「おと」「かぐや」「おり」。体重約900gに成長(6月26日)



外で暮らす猫、特に仔猫を見かけて、「何とかならないかな」と思う人は多いと思います。この春、たけねこくらぶには、来る日も来る日も「仔猫の保護依頼」が寄せられました。ですが、「保護」したら終わりではありません。そこから命をつなぐリレーが始まります。

かつて仔猫を見捨てようとしたけれど、近所のママさんたち、獣医さん、夫や息子などたくさんの人の力をちょっとずつ貸してもらったら何とかなりました。今や、「こと」と「ラオウ」のいない生活は考えらないくらい、楽しい日々を過ごしています。

「無理」なことには手を出さないと考えがちですが、自分にできることは案外あるのではないかと思います。



          担当 川本





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